2月11日(祝日)、大阪教会で西日本主教教区主催冬季セミナーが開催されました。今年は「ラフマニノフと正教会」をグランドテーマに、午前の部は名古屋教会聖歌指揮者マリア松島純子マトシカが「ラフマニノフの『徹夜祷(晩祷)』から見る、ロシア正教会聖歌千年の歴史」と題して講演を、午後の部は尚絅学院大学准教授で気鋭のピアニスト、仙台教会で聖歌指揮者としても奉仕するマトフェイ土田定克兄による、お話を交えてのラフマニノフのピアノ曲コンサートでした。
教区宗務局ではロシア出身の名高い作曲家、敬虔な正教信徒であり我が国でもよく知られているラフマニノフがテーマであれば、広く正教会外の一般の方々にも正教を知っていただく絶好の機会ととらえ、早くから関西の音楽関係の大学、友好団体、合唱団などにチラシを送り、積極的にPRにつとめました。
その結果、130名近い参加者の内、64名が外部からというかつてない規模の「外部宣教」行事となりました。
午前の部の松島姉は、ラフマニノフの代表的宗教曲「徹夜祷(晩祷)」を構成する各曲が、ロシア聖歌が西洋音楽の影響を強く受ける近代以前の聖歌に基づいていることを、「徹夜祷」と古聖歌を実際にCDで聴き比べ、スライド映写もまじえて解説。また「聖三の歌(聖なる神)」を取り上げ、地域と時代によってロシア聖歌がどのように変遷してきたかを実際に耳で聞いて確かめました。そして、その豊かな多様性を貫いて、どの地域、どの時代の聖歌も「教会がハリストスに結ばれた交わりとして神の国へ向かって力強く進んでいく」というイメージを伝えていること、聖歌はいわば「信仰のイコン」であることを強調しました。講演の最後には、大阪教会で日本語の祈祷文を当てはめたラフマニノフの「生神童貞女やよろこべよ」が大阪教会聖歌隊の方々のリードで、参加者全員で唱和されました。
午後の部で土田兄はまずラフマニノフが、ロシア革命による激動と混乱、そして様々な新潮流が音楽界にブームを巻き起こしていた時代に、それらに共鳴する多くの人たちの冷たい評価と対応に屈することなく、「伝統の継承の内にあっての発展」と「愛や苦しみ、悲しみや宗教的な心境」を自身の音楽の内実として誠実に追求したことを、熱い共感をもって紹介。その後、彼の楽曲をいくつか取り上げて、そこに「鐘の響き」やロシアの伝統的聖歌、さらに「怒りの日」のテーマなどキリスト教信仰と関わる様々な要素が、どのように密かにまたあらわに組み込まれているかを、実際の演奏を交えて熱く語ってくださいました。締めくくりは彼の最後のピアノ曲、彼が終生追求した、人は何のために、どう生き、どう死ぬかという問いへの答えとも言うべき「コレルリの主題による変奏曲」を全曲演奏し参加者たちを深い感動に包みました。アンコールにもお応え下さり、午前の部の最後に全員で歌われた「生神童貞女や喜べよ」、そして「元気いっぱい」の「プレリュード変ロ長調作品23-2」で、締めくくりました。